第1回
『コミュニティ・カーシェアリング』シンポジウム in 石巻 開催レポート

講演②

情報技術がもたらす未来の可能性

株式会社NTTデータ東北 代表取締役社長
樫部 昌弘

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※講演内容を忠実に書き出ししておりますので、一部表現が話し言葉の部分もありますがご了承ください。

講演者の写真

1965年東京都出身。東北大学経済学部経済学科卒業。日本電信電話株式会社(現 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ)入社。2006年米国 MIT Sloan Fellows Program(MBA)修了。2014年NTT DATA EMEA 出向(Based in London)。2016年6月株式会社NTTデータ東北 代表取締役社長着任。NTT DATA EMEA時には、EV(電気自動車)の普及を目指しているオーストリアで、充電管理システム「OCC」のプラットフォームを提供。

皆さんこんにちは.NTTデータ東北の樫部でございます。
NTTデータグループはですね、毎年政治・経済・社会・技術こういった観点から近未来の生活がどのように変化していくか、テクノロジーのトレンドがどのように変化していくかといったことを予想してまとめた「テクノロジーフォーサイト」という冊子にまとめています。
本日はこの冊子の中からいくつか最新テクノロジーのトレンドをピックアップしてご紹介し、そういった最新テクノロジーが、我々の生活、特に石巻のような地域コミュニティに対してどのようなインパクトを与えていくかといったことについてご紹介できたらと考えています。

超臨場インタラクション

これはテクノロジーの力を使って現実の世界とバーチャルな世界をシームレスに繋ぐものです。その結果として我々が現実の世界で扱える以上の情報を取り扱えるようにする。その結果として、我々の生活やビジネスに大きな革命を起こすといったテクノロジーになります。
具体的には、この映像は、マジックリープというアメリカのベンチャーがやっているもので、デバイスなしで、非常に臨場感溢れるインタラクティブな体験ができるようになるといった技術が、もうすぐ目の前に来ていることのひとつの例です。

この超臨場インタラクションを構成する要素はいくつかありますが、最近の例ですとナイアンテックさんのポケモンGOがあります。これはAR(拡張現実)という技術を応用した例だということは、皆さんもご存じだと思います。
ただ、超臨場インタラクションのポイントは、ただ単に現実の世界とバーチャルな世界をシームレスに融合するところではなくは、我々の現実の世界からバーチャルな世界に対し、例えば物にさわったり、ボタンを押したりすると、食感、味覚、嗅覚など、バーチャルな世界から何らかのフィードバックが返ってくる、そういった相互作用が体験できるところがこの技術の最大のポイントではないかと考えています。
これらの具体的な応用例として、皆さんもよくご存じであると思いますが、教育や医療の現場、あるいはデザインといった現場で、従来であれば模型を作ってみんなでその場で共有しながら作業をするといったことに対して、3Dのモデルをバーチャルに作りだしてそれを遠隔地からネットワークで繋いでインタラクティブに作業をするといったことが現実にできるようになってきています。

プレシジョンライフサイエンス

この技術は、生命科学分野に関するテクノロジーです。一つはコンピュータの進化によってDNA解析が非常に低コストかつ、短期間で実現できるようになりました。
それからセンシング技術の進歩によって、バイタル情報がリアルタイムに常に簡単に取れるようになりました。
さらに、ビックデータやクラウドといったキーワードに代表される、大量の個人情報を集めて、それらを短期間に低コストで分析することができる。結果として、パーソナライズされた病気の予兆ができるようになって、それを防ぐための手段といったものが具体的に取れるようになった、というテクノロジーです。

現在の応用例として、まず最初にご紹介したいのは化粧品です。
女性の化粧品は、従来は年齢別あるいはお肌のタイプ別といったものが出てきております。イギリスのロンドンのニュー・ボンド・ストリート(New Bond Street)という、日本でいう表参道のような場所に店舗を持つ「GENEU」というところでは、 その店舗を訪れて簡単なDNAの検査を30分ぐらいで行い、コラーゲンの減少速度の速さや抗酸化力といったようなお肌の特性を個人別に分析。その方にピッタリの化粧品を提供するというサービスを実際にもう提供しています。
お値段は二週間分のキットで11万円ということで、簡単には手に入るようなものではないのですが、こういったところに商売が芽生えているという事例です。

また、これはNTTグループの取り組み事例で、東レとの共同開発した「hitoe」というセンサー素材を空港作業員の方に着てもらい、リアルタイムにバイタル情報をモニタリングする、その結果として、作業の安全の確保や体調管理に寄与するといったことが行われています。
生産の現場、労働の現場だけでの応用ではなく、医療の分野での適用、あるいは介護の分野での応用といったことが十分に考えられる技術であります。

人工頭脳との共生

続きましては昨今話題の人工頭脳です。最近のトレンドとしてはコンピュータが時間の流れを理解する、あるいは人間の暗黙知を理解するといったところに到達しています。
結果として、コンピュータが我々人間の知的労働、知的生産の作業を取って代わるようになってきました。人間と機械の役割が大きく変わってくるような局面に今まさに到達しているのではないかと思います。
このチャートは人工知能の進歩を表したものなのですが、1980年代に最初に出現した人工知能はルールベースで、人間の意思決定をサポートするような簡単なものでした。
それが1990年代の半ばに出現した第二世代になりますと統計解析の技術を適用して多数の候補の中から最適なものを短時間に選び出すことが可能になりました。
昨今話題の第三世代は、まさに人間の頭脳をコンピュータにインプリさせる、考えさせることができます。
こちらの適用例は自動運転です.コンピュータにうまく運転するための方法を学習させるといった実証実験です。コンピュータ自身が車を運転しながら物にぶつかる、あるいは車にぶつかる。ぶつかることを経験しながらぶつからないための運転を自分で学んでいくといった事例になります。

オートノマスモビリティ

これは、午前中の先生方のご紹介にもありましたが、コネクティッドカーとIoTといわれる、すべとのモノがネットワークでつながる、車もつながる、ありとあらゆるデバイスがネットワークにつながるというものです。結果として都市全体が流動システムとして最適化していくとこういった新しいテクノロジーになります。

今現在、何らかの形でネットワークにつながっている車は世界で7台に1台と言われていますが、2020年には5台に1台、2030年には2台に1台になるのではないかという情報がございます。
また、皆さんお持ちのスマートフォンで、人と人同士がネットワークに常につながる。車もつながる、人もつながる。その結果として登場したのが、柴山先生のご紹介にもありましたカーシェアリングのようなものです。
あと、同じ方向にいる人たちを見つけ出して移動手段を共有するライドシェアというような考え方が、実際にサービスとして登場しています。
私は使用したことがないですが、日本でもライドシェアのサービスはすでに登場していて、7月の段階ですでに2万5000人の方が登録をしているということでございます。

また、これはスイスの事例ですが今年の6月、世界で初めて実際の公道でバスの運行サービスを完全自動運転でサービスを開始したというようなニュースをピックアップしてみました。これは観光目的で使われていますが、石巻のような地域社会においては公共交通機関の自動運転といった分野での応用事例も将来出てくるのではないかという考えています。

ここまでは、最新テクノロジーのトレンドとその適用事例といったことをご紹介しましたが、少しNTTデータグループの交通分野での新しい取り組みについてご紹介できればと思います。
まず初めの事例は、オーストリアのウィーンの事例でございます。
こちらは、オーストリアのウィーンとその近郊にお住いの通勤客を対象としたラストワンマイルの所は、電気自動車あるいは電気自転車といった乗り物をシェアしていただく。都市間の移動は、公共交通機関を使っていただく。
この一連の移動に関わる様々なシーン、例えば電気自動車の予約やチャージングステーションでの支払、座席の予約、公共交通機関の運行状況の検索、こういった一連のサービスを全てスマートフォンで出来るようにしたサービスの実証実験になります。
こちらをNTTデータとオーストリア連邦鉄道、その他10社ぐらいのパートナーの方々とウィーンで実証実験に参加して、2011年ごろからNTTデータも手伝わせていただいているという事例です。

それから二つ目の事例ですが、これはロンドンの南西200マイルぐらいのイギリスのエクセターという人口12万人ぐらいの都市で行っている実証実験です。
車の位置情報、渋滞の統計情報、現在の車の交通の状況のリアルタイムのモニタリング、それらを使って渋滞の予測をする。ただ単に予測をするだけではなく、そこから渋滞を未然に防ぐために信号をリアルタイムに制御していく。こういった実証実験を2015年からNTTデータとエクセターの市の方とで一緒にやらせていただいております。

さて、駆け足でテクノロジーのトレンドについてご紹介してまいりましたが、最後にこういった新しい技術といったものが我々の生活に実際にどういう風に役立ってくるかといった事について、5分間ほどのビデオを流させていただきたいと思います。

NTTデータグループは、ITを通じて引き続き皆様の暮らしをより安全にそして快適に便利にしていく事に貢献していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

  • 自動運転の実証実験
  • 人間とコンピューターの役割の変化
  • 現実とデジタルの世界をつなぐ技術
  • コネクテッドカーとIoT
  • オーストリア・ウィーンの事例
  • 人工知能の進歩
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