第1回
『コミュニティ・カーシェアリング』シンポジウム in 石巻 開催レポート

パネルディスカッション

コミュニティ・カーシェアリングの幕開け 小テーマ3
石巻で今後どのような展開が考えられるか

MOVIE

動画でもご覧いただけます。

※講演内容を忠実に書き出ししておりますので、一部表現が話し言葉の部分もありますがご了承ください。

  • モデレータ:
  • 柴山 多佳児(ウィーン工科大学)
  • パネラー :
  • Christian Steger-Vormetz(CARUSO Carsharing eGen)
    家田 仁(政策研究大学院大学)
    鈴木 高宏(東北大学 未来科学技術共同研究センター)
    増田 敬(一般社団法人 石巻じちれん)
    吉澤 武彦(一般社団法人 日本カーシェアリング協会)
柴山
では、今後の展開の話に移りましょう。
まず、オーストリアのCARUSOはシステムが入っていますが、まだ日本では手でやっています。今後ITシステムを入れるという感じでよろしいのでしょうか。
吉澤
6月にオーストリアに視察に行った一番の目的は、ITシステムをどうやっているかを確認することでした。手書きも味はあるんですけど、集計するのは結構大変なんですね。
Christianのところでは、GPSの機能と予約のシステムをうまく連動させてやっていて、年配の方などが使いづらい場合はサポートセンターみたいな形で電話でサポートしています。
しかし、私はそれもコミュニティで解決できると思っています。教えてくれる人はいるはず。そういうシステムを、できる範囲で、できるところからやれればと、Christianに早速色々相談させてもらい、CARUSOのシステムをお試しでちょっとだけ使わせてもらうことになりました。
まず、僕らが事務局で使っている車からやり始めて、ユーザにもお試しでやってもらって、色々と確認しながらやります。
CARUSOのシステムはシンプルで、すごく僕らに合うんですが、日本のバージョンだったら外出支援だとか結構ありますんで、それに沿うような形を加えてカスタマイズするとか、模索していきたいと思います。
柴山
鈴木先生、ICTの新しいシステムが入っていくと、若い世代のユーザをつかめる可能性が大きいと思いますが、どうお考えですか?
鈴木
確かに若い人の方がICTの仕組みにすごく入りやすいのですが、一方で、高齢の方が多い現状で行った時に、逆にそれを入れることで今まで使ってたユーザを阻害することになったら、もともこもありません。専門のエンジニアじゃないと開発できない部分も多く、ユーザが自分達でカスタマイズができるところまでは、まだ行けてないと思うんです。
今日、樫部社長に講演いただいたのも、ぜひ、数多くこの現場に足を踏み入れていただきたいということもありました。また、やはりここに足場を置いて、一定期間以上、持続的に研究開発と、実際の社会実装を同時並行でやっていくことが重要じゃないかと思います。
柴山
Christian、その点でICTを入れたオーストリアで最大のメリットは何でしたか?何か欠点は見えましたか?例えば高齢の方が使えないとかそういうICTの弱点とかありますか?
Christian
もっとも大きな利点は便利ということですよね。しかし、使いこなさなければ持続しない。いかにユーザに使いやすくしていくかということだと思います。
ITシステムも、高齢者にも使いやすい形で提供していく。そしてそのためのインターフェースをどのように作って段階的に導入していくかが重要だと思います。
ですが、こういったことはNPOだけで解決できるようなものではありません。産業・民間企業が積極的に参画してこそ、共に発展していくものです。そして将来のチャンスを見つけていくことが重要だと思います。
柴山
ユーザでもあった増田さんの目から見て、紙で管理するというのはやっぱり面倒くさいですか? ITが入ったら便利になると思いますか?
増田
いや、逆にですね、私はパソコンとかは苦手な方で…。かなりの人が抵抗(ITを活用することに対して)があるかなと思います。利用者がかなり高齢の方が多いので簡単なシステムがあればよいと思います。
柴山
システムを入れるとすると「使いやすさ。わかりやすさ」というのは非常に重要になりますね。今はIT・ICTの方にフォーカスしていましたが、鈴木先生、この他にも今後の方向性・可能性はありますか?
鈴木
実際のところ、増田さんが言われたような、高齢者のニーズに即した形の取り組みが必要ですね。
また、シェアリングをもっと便利にやっていくには、鍵の管理も課題です。今こちらでは合鍵を受け渡しているわけですが、海外のカーシェアを見るとスマートフォンで登録し、それで鍵が開錠されて車のエンジンがかかる、というような仕組みになっています。
でも、それを日本の車に入れようとすると、なかなか共通化されていない。セキュリティ上の問題とかもあるんでしょうけどね。
逆に、我々はそういった現状をチャンスと捉えていて、大手メーカーがやっていないのであれば、イチからつくるというより、少しカスタマイズした車なり、インフラをやっていくのがいいと思います。
もう一つは、電気自動車の可能性。地域のエネルギーをうまく活用するってことが、何かしら経済のメリットを得られるんじゃないでしょうか。いま、電池の再生に取り組もうと考えているところです。
柴山
Christian、エネルギーに関して非常に野心的な目標を持っていたと記憶しているんですけど。
Christian
私たちの方では、2030年にエネルギーを自給自足するというのが法律で決まっています。電気自動車も再生エネルギーによって動かせるというようなことを言っています。またエネルギー効率を上げていかなければと法律にも書いてあります。エネルギーの消費量も下げるということも決まっております。課題は大きいですが、賛成をする住民も増えております。
柴山
カーシェアリングのプラットフォームも提供というような形でよいでしょうか?
Christian
私たちもかなりの貢献ができると思っております。最初は私たちも単体のプロジェクトをやって、それほど大きな動きがなかったわけです。だんだんとカーシェアリングの割合も高くなってますし、イノベーションがあったからこそ成長してきました。
柴山
エネルギーの面から見てみると、カーシェアリングや公共の交通機関を関連させていくということも発展の方向性ではないかなと思います。宮崎交通さん、JR東日本さんとかも交えて昨日非公式というか座談会もありましたが、冷静に考えてみると、お互い同じ側に立ってうまく協調していくのがいいのかなと思いました。今後の発展によってICTが入ってくると連携していきやすいのかなと思いますが、鈴木先生はどうお考えですか?
鈴木
単体で効率を上げるのは難しいですね。現実はそう簡単ではない。既存の交通事業者、バス、JR、タクシーなどは協会と競合するものではなく、協調することでお互いの部分が発揮できるんじゃないでしょうか。それを実現するには、舞台的に詳細設計が必要ですが、地域のデータがないので詳細設計する前提ができないのが現状です。ICTの仕組みをあえて強調しているのは、きちんとデータをとって事前の設計に生かすのと、その効果を客観的に測れるようにすることが大事だからです。個人の移動のデータはプライバシーがあるのでそれに見合うようなサービスを提供していくことが大事だと思っております。
柴山
吉澤さん、第二回のシンポジウムへの意気込みがあると思うのですが、いかがですか?
吉澤
第2回をやりたいと思います!という気持ちを込めて第1回とつけました。
オーストリアとの出会いはすごく嬉しかったし、参考になりました。情報交換したり意見交換したり、お互いの課題や先の可能性を確認しあい、有効的な協力体制を作っていきながら、これからの未来を形作っていきたいです。ぜひ、第2回をやりたいですけども、もしかしたら次はオーストリアかもしれないですね。
それに向けて、コミュニティ・カーシェアリングネットワークというのものをパンフレットの裏に入れてます。ぜひ、今まで以上にコミュニティで運営するカーシェアリングについて関心を集めたい。参画を求めたいと思います。
柴山
ありがとうございます。日本とオーストリアの交流が今後も続いていくということ安心しております。最後に鈴木先生、お願いいたします。
鈴木
コミュニティ・カーシェアリングネットワークの説明が吉澤さんからあったところで一つ補足します。
人のコミュニティだけではなくて、技術、ビジネス、サービス、公共交通、エネルギー、自動走行といったものとつながって、地域初、我が国初になる新しい概念のネットワークになっていったらいいんじゃないかと思っています。
ここにいる皆さんも、他人事に思わないでいただくといいなと思います。
柴山
さきほど医療系の話がフロアの方からありましたけど、幅は広いですね。交通専門じゃない方もいますが、日常生活で交通を使わないといういう人はいないですよね。交通を通して人間は色々活動しているわけですので、今後はオープンなマインドでまた広く議論ができたらなと思います。